
タイ王国・スタディツアー2012
(財)青少年国際交流推進センターでは、平成24年3月19日~ 27日、自主事業として「タイ王国・スタディツアー2012」を
実施しました。
大学生を中心とした9名の青少年と2名の同行職員の合計11名は、青少年健全育成プロジェクト「For Hopeful Children
Project (FHCP)2012」にボランティアスタッフとして参加しました。これは、孤児であったり、障がいを持っていたり等の理由で社会的に恵まれない状況にあるタイの子供を「希望あふれる子供たち (Hopeful Children)」と呼び、彼らのために行われているプロジェクトです。
FHCP2012に先立ち、タイの「希望あふれる子供たち」の生活する児童養護施設を訪問し、それぞれの施設で子供たちと共に生活・活動することを通じて、子供たちとのコミュニケーションを深めました。活動を通じ、国際協力活動を実践するとともに、国際協調の精神を養いました。
月日 | 活動内容 |
3月19日 (月) |
バンコク集合 |
3月20日 (火) |
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カーンチャナブリー県へ移動 | |
子どもの村学園ムーバーンデックでの活動 | |
子どもの村学園ムーバーンデックにて、子供たちと交流 子どもの村学園ムーバーンデック滞在(2泊) |
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3月21日 (水) |
タンマヌラック・子どもの村学園ムーバーンデックでの活動 |
タンマヌラックにて、子供たちと交流・施設見学 子どもの村学園ムーバーンデックにて、職業訓練ワークショップ参加、 子供たちとの交流会・文化紹介 |
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3月22日 (木) |
サムットプラーカーン県(バンコク郊外)へ移動 |
FORDECでの活動 | |
FORDECデイケアセンターにて子供たちと交流、子供たちの自宅 (低所得層家庭)訪問 |
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3月23日 (金) |
チョンブリー県へ移動 FHCP2012タイボランティアスタッフと顔合わせ、事前ミーティング、 FHCP2012事前準備 |
3月24日 (土) |
FHCP2012 |
開会式、海水浴、参加各団体のパフォーマンス披露 | |
3月25日 (日) |
FHCP2012 |
軍用船でタイ湾周遊、アスレチック体験、海岸清掃活動、 ブース別ワークショップ活動(日本文化紹介)、海水浴、参加各団体のパフォーマンス披露 |
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3月26日 (月) |
FHCP2012 |
閉会式 子供たちとノンヌッチ熱帯植物園見学 |
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バンコクへ移動 FHCPタイボランティアスタッフと夕食会 |
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3月27日 (火) |
バンコクにて解散 |





■ For Hopeful Children Project (FHCP)2012
テーマ:「笑笑(イムイム)グローバル・スマイリング」
1991年に始まったFHCPは、今年で22年目を迎えました。本年の会場となったマハスラシンハナー海軍基地は収容人数が多く、昨年の倍以上の1,200名の子供たちが、タイ全国の20施設から参加しました。本年のテーマは「笑笑(イムイム)グローバル・スマイリング」です。これには、「自分が目の前の相手のことを想って笑顔になれば、相手も笑顔になり、それを見た周りも笑顔になる。笑顔の輪を広げていこう」という思いが込められています。目の前にあるゴミを拾って、「グローバル・スマイリング」を増やし、「グローバル・ウォーミング(地球温暖化)を軽減させよう」と願って、会場になった海岸でゴミ拾いも行いました。
■今回訪問した施設
1. 子どもの村学園ムーバーンデック
カーンチャナブリー県にある児童養護施設で、1979年に設立されたNPOです。両親のいない家庭又は、貧困・家庭崩壊などで育児のできない家庭出身の子供たちを預かっています。3歳以上の子供たちが、共同生活をしながら生きる術を学ぶ場であり、タイ教育省から認可を受けた学校でもあります。参加者は、川遊びや日本文化ワークショップでの交流、職業訓練ワークショップの見学等から、子供たちの暮らしについて学びました。
2. タンマヌラック
カーンチャナブリー県にある施設で、仏教の精神に基づき、尼僧により2000年に設立されました。両親のいない家庭や育児のできない家庭出身の子供たちを預かっています。タイ・ミャンマー国境地域で生まれた山岳少数民族(カレン族、モン等)の子供たちが多くいます。今回は、半日の訪問で、子供たちとの交流及び施設見学を行いました。
3. FORDEC(フォルデック)
FORDECの創始者アムポン・ワッタナウォンは、孤児として、家もなく、食べるものも十分にない生活をしました。自分と同じ思いをさせたくないという一心で、困難を抱えた全ての人々に対する愛と心配りに自分自身の人生を捧げる決意をし、1998年にFORDECを設立しました。今回は、サムットプラーカーン県にあるFORDECデイケアセンターを訪れ、センターに通う低所得者層家庭の子供たちと交流し、自宅を訪問しました。





子供たちの笑顔が教えてくれたこと(抜粋)
子供と関わるボランティアを探していた時に見つけた「タイ王国・スタディツアー2012」の募集。「恵まれない子供たちとの交流」という内容に惹かれ、参加を決めた。タイへ向かう道中、「自分は『恵まれない子供たち』に何をしてあげられるのだろう」と問い続けた。大学で国際政治学を学び、難民問題や子供の権利などに興味を持っていながら、実情を知る機会がな
かった。数字や活字で表される飢餓や貧困といった問題を現地で子供たちと触れ合いながら、本質を見つめたいという思いでタイの地を踏んだ。
「子どもの村学園ムーバーンデック」では、初めは、タイ語が全く分からないため、子供たちとどのようにコミュニケーションをとればよいのか不安だったが、子供たちはとても人懐っこく、私の手を引っ張って「こっちであそぼ!」とニッコリと笑いかけてくれた。子供たちは「野性児」という言葉がぴったりなくらい元気で、自由奔放な姿が眩しかった。しかし、彼らは貧困や虐待といった事情で、両親と離れて暮らしているという事実が脳裏をよぎった。私が簡単に触れてはいけない地雷を彼らは抱えているだろうと思うと、目の前の子供に対して臆病になってしまったが、彼らのそんなことを感じさせない笑顔に私もつられて笑みがこぼれた。
Beerという男の子は、両親を飲酒運転の事故で失くし、虐待を受けた傷跡が体に残っていた。自分の誕生日は「わからない」。年齢も「たぶん7歳くらい」。その割に体は異常に細く、体重も軽かった。初日にはちょっとしたことでパニックになり、泣き出すことがあったが、私たちに慣れてくると、笑顔で走り回る年相応の元気な男の子であった。甘えん坊で私の膝から離れようとせず、私のカメラで自分の写真を撮る、なんて自己顕示欲の強い子なんだと思ったが、虐待経験のある子供は自己愛が強い傾向があるという心理学的な見解を知り、笑顔の裏に見え隠れする彼の過去を思うとやるせない気持ちになった。この施設での共同生活や職業訓練を通して、立派に育ってほしいと心から思った。(中略)
「自分は何をしてあげられるのだろう」この問いはスタディツアーでたくさんの子供たちと交流するうちになくなっていた。私は彼らの何かを大きく変えることはできないちっぽけな存在だけど、目の前にいる子供一人一人に全力で接することで、これから成長して無限の未来を持つ彼らの中で小さな記憶となり、軸となると考えるようになった。同時に「幸せ」について思いを馳せた。親と離れ離れでも、貧しくても、自分の暮らす環境の中で幸せを見つけながら必死に生きている。彼らの笑顔には人を幸せにする力がある。日本を含め世界中の子供が笑顔で生きられるために、自分ができることを模索しようと思う。