macrocosm



一般財団法人青少年国際交流推進センター理事長の挨拶

マクロコズム平成28年度第1号(第114号)の発刊に当たって

一般財団法人青少年国際交流推進センター
理事長 川上 和久

マクロコズム第114号(平成28年度第1号)の刊行に当たり、初めに熊本地震により被災された皆さまに、心よりお見舞いを申し上げますとともに、被災地の一日も早い復旧、復興をお祈り申し上げます。当センターとしても、出来得る限り支援をいたしてまいりたいと存じ、日本青年国際交流機構(IYEO)と緊密な連携を図りつつ、IYEO会員そして世界各国の事後活動組織や既参加者からの寄付を被災地に送りました。2度にわたる本震に加えて余震が続いており、被災地の復興もこれからであるため、長期的な支援を続ける必要性を認識しております。

マクロコズム紙面では、今月号においても、当センターの事業計画に加え、自主事業であるタイ王国・スタディツアー及び国際交流リーダー養成セミナーの報告、既参加青年等の積極的な参加により事業が運営される青年社会活動コアリーダー育成プログラムについて紹介しています。マクロコズムが今後とも全国で活動されている皆さんの活動の一助となればと思いますし、引き続きの御支援をお願い申し上げます。

平成27年度の内閣府青年国際交流事業(当センターが内閣府との契約により実施)は、所期の成果を得て無事に終えることができました。これは都道府県の担当部署の方々のご協力と日本青年国際交流機構(IYEO)の皆さんの実行委員会が中心となって御協力を頂いた賜物と考えております。皇太子殿下御成婚を記念して始められた国際青年育成交流事業は、9月に実施されました。内閣府と共催している9月23日~ 24日の国際青年交流会議においては、皇太子殿下の御臨席を仰ぎ、殿下からおことばを賜り事業の成果が披露される等、大変和やかな雰囲気での式典となりました。また、当センターの自主事業といたしまして、タイ王国へのスタディツアー(タイ国内の社会的に恵まれない児童等が生活する養護施設を訪問等)、国際理解教育支援プログラム及び国際交流リーダー養成セミナーの実施、マクロコズム発行等による情報提供・啓発等々に成果を得て無事終了することができましたことを御報告致します。

14回続いた青年社会活動コアリーダー育成プログラムは、平成28年度より、地域課題対応人材育成事業「地域コアリーダープログラム」と装いを新たにし、先進事例のある外国に派遣し、組織で活動する青年リーダーとの交流を通じて、各分野の課題対応の方策とともに、組織の運営、関係機関等との連携及び人的ネットワーク形成に当たって必要となる実務的な能力の向上を図ることを目的として実施されることとなっています。当センターは「国際化の急進展する時代にふさわしい青年リーダーの育成とこれらの青年の人的ネットワークの形成」という設立の趣旨・目的の元、役職員一丸となり一層頑張って参る所存です。今年度も変わらぬ御支援・御協力をお願い申し上げます。

平成28年度事業計画書

1 青少年国際交流事業の企画、実施及び協力
  • 青少年国際交流スタディツアー

    地域での国際交流活動に関心と意欲のある青少年を内閣府の青年国際交流事業既参加青年の組織のある国に派遣し、ボランティア活動への取組や訪問国青年の案内による視察、調査等を行う。

    年1回 9日間、参加人数20人程度

  • 国際交流リーダー養成セミナー

    国際理解の促進を図るため、国際交流に携わる指導者の養成を行う。

    年1回 東京で開催、参加人数20人程度

  • 国際理解教育支援プログラムの実施

    内閣府の実施する青年国際交流事業に参加した在日外国青年等を、国際理解教育に資するため、日本の学校に派遣する。

    年6回 派遣人数各3人程度

2 内閣府と共催する青年国際交流事業
  • 国際青年交流会議

    内閣府主催の国際青年育成交流事業の中で、基調講演・テーマに基づいた視察やディスカッションプログラム等を共催で行う。

    年1回 東京で開催、参加人数160人程度

  • 日本・ASEANユースリーダーズサミット

    内閣府主催の「東南アジア青年の船」事業の中で、日本とASEAN諸国を結ぶネットワークづくりに参加する機会を提供することを目的として共催で行う。

    年1回 東京で開催、参加人数500人程度

3 内閣府等の実施する青年国際交流事業への協力
  • 内閣府等の実施する青年国際交流事業への協力
  • その他の国際交流事業への協力
4 青少年国際交流に関する啓発及び研修
  • 青少年国際交流全国フォーラム

    全国各地域で国際交流に携わる指導者及び青年を対象に、有識者の講演、青少年国際交流活動に関する事例発表・討論等を行う。

    年1回 新潟県で開催、参加人数300人程度

  • 団体会員のブロック大会(青少年国際交流を考える集い)

    全国8ブロックで開催。平成28年度は次の各県で開催する。

    北海道・東北ブロック・・・秋田県 関東ブロック・・・埼玉県 北信越ブロック・・・新潟県(※)
    東海ブロック・・・静岡県 近畿ブロック・・・兵庫県 中国ブロック・・・島根県
    四国ブロック・・・徳島県 九州ブロック・・・福岡県
    ※青少年国際交流全国フォーラムと同時開催
  • 青年国際交流事業報告会

    国際交流に関心のある青年を対象に、青年国際交流事業参加者による報告会を行い、国際交流事業への参加を促す。

    年3回 東京で開催、参加人数各250人程度

  • 推進委員会議

    当センターの幹事推進委員及び都道府県団体会員の都道府県推進委員の出席のもと、会議を行う。

    年2回

5 青少年国際交流に関する出版物の刊行及び広報活動等
  • 機関誌の刊行

    全国の地域や職域及び海外において行われている青少年国際交流活動の紹介などを中心とした情報誌「MACROCOSM(マクロコズム)」を発行し、都道府県を中心とする関係機関及び一般に配布する。

    季刊 15,000部1回、2,500部3回

  • 年報の刊行

    全国の地域や職域及び海外において行われている青少年国際交流活動の実施状況など、青少年国際交流に関する情報や資料を収集、整理した年報を作成し、国際交流実施団体等に配布するとともに、政府刊行物センター等において販売する。

    年1回発行1,300部

  • ホームページによる国際交流活動に関する情報提供
    • 情報誌「MACROCOSM(マクロコズム)」のホームページ上での公開
    • 当センターの概要及び事業案内、各種募集案内等の公開
  • その他

    青少年国際交流事業に関連する各種資料を作成し、都道府県を中心とする関係機関に配布する。

6 青少年国際交流に関する情報収集及び調査研究
  • 青少年国際交流事業に関する情報収集
    • 青少年国際交流情報ネットワークの整備内外の青少年国際交流関係者に関する情報を収集し、ネットワークを整備する。
    • 海外における国際交流活動に関する情報収集関係各国に職員等を派遣し、国際交流に関する情報を収集する。
  • 青少年国際交流に関する調査研究
7 青少年国際交流に関する支援・コンサルティング等
  • 国際交流活動の推進

    全国各地域で行われる青少年の国際交流活動を推進する。

  • 活動奨励金の交付

    国際交流活動の一層の活性化を図るため、都道府県団体会員に対し、活動奨励金を交付する。

  • 青少年国際交流コンサルティング

    青少年国際交流事業の実施を希望する団体を対象に、青少年国際交流事業の企画、実施に関する相談に応ずる。

  • 国際ボランティア等に関する情報提供

    依頼に応じて国際協力、国際貢献に関心のある青少年に対し、国際協力、国際貢献を行う活動団体、活動内容等を紹介する。

タイ王国・スタディツアー2016

一般財団法人青少年国際交流推進センターの自主事業「タイ王国・スタディツアー2016」が平成28年3月7日(月)~ 15日(火) に実施されました。

このスタディツアーは、タイの児童養護施設を訪れ子供たちの生活環境を知ることと、現地で行われる青少年健全育成プロジェクト「For Hopeful ChildrenProject (FHCP) 2016」にボランティア・スタッフとして参加し、現地の実行委員と協働して子供たちをサポートすることを組み合わせたプログラムで、今年は、大学生と社会人を含む参加者17名と同行職員2名の合計19名が参加しました。

FHCPは、「東南アジア青年の船」事業のタイの既参加青年であるVisit氏が、自身のネットワークをいかし、始めた事業で、孤児や難民、障がいを持っているなど社会的困難を抱える子供たちを「希望あふれる子供たち(Hopeful Children)」と呼び、彼らをタイの海軍施設に招いて共同生活をし、海水浴などの活動を行います。子供たちと引率者、そして、タイとフィリピン、ラオス、ベトナム、シンガポール、ミャンマー、日本などからのボランティアを合わせ、参加者総勢約900名の一大プロジェクトとなりました。

タンマヌラックの子供たちと
月日 活動内容
3月7日(月) バンコク集合
3月8日(火) カーンチャナブリー県へ移動
子供の村学園ムーバーンデックでの活動
子供たちと川遊び、交流会(折り紙、縄跳び、など)
施設内のゲストハウス(伝統的高床式木造住居)に滞在(2泊)
3月9日(水) タンマヌラックでの活動
子供たちとの交流会(折り紙、ボール遊び、など)
施設内見学(宿舎、教室、食堂、農園・きのこ栽培所、など)
子供の村学園ムーバーンデックでの活動
副理事長から、学園概要説明・質疑応答
施設内見学(リサイクル工場、農園・養鶏・養豚場、など)
学園評議会見学、子供たちと川遊び、歓迎交流会(文化紹介交流)
3月10日(木) サムットプラーカーン県(バンコク郊外)へ移動
FORDECデイケアセンターでの活動
子供たちとの交流会(文化紹介交流、折り紙での手裏剣作り、ボール遊び、など)、支援家庭(近隣の低所得者層家庭)訪問
3月11日(金) チョンブリー県へ移動
FHCP2016ボランティアスタッフ・ミーティング
3月12日(土) FHCP2016
開会式、海軍によるドッグショーやパラシュート・デモンストレーション、海水浴、参加団体によるパフォーマンス披露
3月13日(日) FHCP2016
海軍船乗船体験、海軍訓練体験、消火活動体験、消防はしご車体験
日本文化紹介ブース、海水浴、参加団体によるパフォーマンス披露
3月14日(月) FHCP2016
閉会式、子供たちを見送り
バンコクへ移動
3月15日(火) バンコクにて解散
今回訪問した施設
1. 子供の村学園ムーバーンデック (カーンチャナブリー県)

1979年設立の子供財団が運営する学園。タイ教育省から認可を受けた学校であり、大自然に恵まれた環境で3歳以上の子供たち約130名が共同生活を送っています。

2. タンマヌラック (カーンチャナブリー県)
子供たちとボール遊びをする(タンマヌラック)

仏教の尼僧が2000年に設立した児童養護施設で、少年僧や少女の尼僧、また、タイ・ミャンマー国境地域で生まれた少数民族(カレン族、モン族等)の子供たち約120名が共同生活を送っています。

3. FORDEC(フォーデック)デイケアセンター( サムットプラーカーン県)

1998年設立の児童養護施設で、地域の低所得者層家庭に対する生活支援を行っています。デイケアセンターには、就学前の子供たち約200名が通っています。

子供の村学園ムーバーンデックの子供たちと
子供たちと川遊びをする(ムーバーンデック)
FORDECの子供たちと
折り紙で手裏剣を作る(FORDEC)
子供たちとソーラン節を踊る(FHCP)
子供たちと海水浴を楽しむ(FHCP)
【参加者感想文】
日野 美久

FHCP二日目に、海岸で3、4歳の男の子と遊んでいた時のことです。私は男の子がボールを投げてはそのボールを追いかけるという遊びに夢中になっていたところを、その子が溺れたりしないよう後ろから追いかけて見守っていました。すると男の子がボールを投げたその先で、全盲の女の子とその施設の男性が楽しそうに遊んでいました。男の子のボールは二人から1メートルほど離れた場所にあったのですが、男の子はボールを拾うと、その二人の様子をじっと観察しはじめたのです。じっと、ただひたすらその二人の様子を眺めていた3、4歳の男の子が何を思っていたのか私には分かりません。ですが、きっと男の子にとって全盲の人を見るのは初めての経験で、普通とは違う動きをする女の子とその子と遊ぶ男性がとても興味深く見えたのだと思います。時折見せる全盲の女の子の笑顔に合わせて、男の子が見せる笑顔を見ながら、私も笑顔になっていました。

私はこの時、これこそがFHCPの良さであると思いました。ハンディキャップを持つ子供たちがステージですばらしいパフォーマンスをしたり、何らかの事情により施設で暮らしている子供たちが新しい友達を作ったり助け合ったり、という良さだけではなく、様々な個性を持つ子供たちがお互いを受け入れ合う場、もしくはそのきっかけとなる場がFHCPにはあるのです。きっとあの男の子はこれからもFHCPに参加をし、人生の中でハンディキャップを持った人々と出会っても、受け入れ思いやることができる人へ成長するのだと思います。貴重な瞬間を見て得た気付きでした。

私は、この経験を日本の子供たちにもしてほしい、経験すべきだと考えています。私は、教育を学んでいたため、実習等で小学校に通うことがありました。学校でハンディキャップをもつ子供たちに対して冷たい態度をとる子供たちを見ていると、彼らには個性を認め合うための経験が少なかったのではないかと思います。そのためFHCPを日本でも実現させ、互いの個性を受け入れ、互いを思いやることのできる子供たちが育つ場を創りたいと思っています。その実現に向け、今後は同じ志を持つスタディツアー過去参加者の皆さんとつながり、活動していきます。

一般財団法人青少年国際交流推進センター主催

国際交流リーダー養成セミナー

国連世界食糧計画(WFP)職員 野副美緒さんとの懇談会

~国際協力の現場でリーダーシップを発揮するには~

平成28年3月26日(土)、国連世界食糧計画(WFP)職員の野副美緒さんをお迎えし、国際交流リーダー養成セミナーを実施しました。野副さんは、第26回「東南アジア青年の船」事業(1999年)参加青年です。当日は、国際社会で活躍したい若者を中心に41名の参加がありました。

前半は、参加者それぞれが10年後の日本や世界、自分を予測するワークで始まり、野副さんのWFPでのフィールド経験や国連でプロジェクトが実施される過程などの説明があり、生活環境の異なる赴任地で、価値観の違いを乗り越えて働くことの課題や、勉強を続けることの重要性が語られました。

後半は、リーダーシップがテーマでした。日本人も国際社会でリーダーシップを発揮する可能性が「大いにある」と述べた野副さんは、国連では、部下の声を聞き、異なる意見を尊重するのが得意な日本人は組織の上司として歓迎されているケースが多いことを紹介。その一方で、日本社会では、調和を重んじるあまり、突然異なる意見を言うと驚かれたり戸惑われたりした御自身の経験から、日本人の良さは伸ばしつつ、空気を「読む」ばかりでなく「作る」人が求められている、という指摘がありました。そして、力をつけるためには、いろいろなところに身を置いて、小さな経験を積み重ね、「タフさ」を身につけることが大切だと参加者にエールを送りました。

最後に、今から100年以上前に日本人が思い描いた未来予測の多くが、現代社会で実現している例を挙げ、将来を予測しながら10年ぐらいの長いスパンで、なりたい自分の青写真を描く大切さ、また、その延長上に「どんな世界を創りたいか」、「そのために何ができるか」、「どうしたいのか」という視点を結び付けて考えれば、今ある問題を解決するための第一歩になるのでは、という前向きなメッセージで話を締めくくられました。

参加者との対話を大切にしながら講演する野副さん
<参加者のコメント>
  • 国連を目指す人はもちろん、多様な職種、環境で役に立つ内容だった。
  • 話に聞き入ってしまいあっという間でした。一言一言が身にしみました。今後にいかします。
  • 途上国の前線で働く中での気付きをシェアしていただき、視野が広がった。
  • 未来を考えるきっかけになった。リーダーシップを発揮する際の気付きについて仕事でいかしたい。
野副 美緒(のぞえ みお)さんプロフィール
内閣府第26回「東南アジア青年の船」事業(1999年)参加青年(アシスタント・ユース・リーダー)
学生時代から緊急援助のボランティアとして活動。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで開発途上国における社会政策学修士号取得後、2003年から国連世界食糧計画(WFP)勤務。これまでに、スリランカ、スーダン(現南スーダン)、ソマリア、ラオス、イエメンなどで緊急援助、復興支援に携わり現在育児休暇中。

「~東日本大震災から5年~私たちが忘れてはならない今」

講師:久保田 崇氏

平成28年3月27日(日)、一般財団法人青少年国際交流推進センター主催、日本青年国際交流機構共催で「国際交流リーダー養成セミナー」を実施し、IYEO会員、一般の大学生、中学生など28名が参加しました。

今回のテーマは、「~東日本大震災から5年~私たちが忘れてはならない今」でした。講師に久保田崇氏をお迎えしました。久保田氏は、大学卒業後、内閣府に入職し、青年国際交流担当の参事官補佐としても活躍された後、震災をきっかけに陸前高田市に赴任し、2011年8月から2015年7月まで4年間、副市長を務められました。

国家公務員から副市長になられた経緯、陸前高田市の復興状況、そしてセミナーのテーマでもあるリーダーシップについて久保田氏が実践したことを中心に講演していただきました。また、後半にはグループワークを設け、復興支援の取組や、今後取り組みたいことなど各自の経験を共有しました。

参加者は、今回のセミナーを通して、震災直後の様子、そして震災から5年経った現在の様子を知り、理解を深めました。復興に向けて、持続的に支援を行うことの必要性を感じ、改めて参加者は何ができるのかを考える時間となりました。
*本セミナーでは、参加費1000円の内、500円を陸前高田市に寄付しました。

参加者の感想(アンケートより抜粋)
  • 復興は、まだ道半ばという言葉が印象的だった。
  • マクロな視点を持ちながら、地域で自主的に働いた経験談が非常に明快で心打たれるものがあった。
  • 陸前高田市の復興に関わったお話を聞いて、住宅や、インフラ整備などの多くの問題があることが分かった。
  • 年上の部下に対する接し方が参考になった。
  • まずは、素朴な意見でも交わし合うことが大切だと思った。
  • 復興の第一線で働いておられた方のお話を直接伺えたのは非常に有意義だった。
13:00~13:30 受付
13:30~13:35 主催者挨拶
13:35~15:15 久保田氏の講演
15:30~15:55 グループでの意見交換
・自身の復興への取組の紹介
・今後、取り組みたいこと
・久保田氏への質問をまとめる
15:55~16:30 質疑応答
壊滅した陸前高田市役所の写真を見ながら、復興の課題を話す
久保田 崇(くぼた たかし)さんプロフィール
学生時代に、内閣府の平成12年度「国際青年育成交流」事業(デンマーク)に参加する。京都大学卒業後、内閣府に入省。内閣府青年国際交流担当を経て、2011年8月から2015年7月までの4年間岩手県陸前高田市で副市長を務める。
内閣府を退職し、2016年4月から、立命館大学大学院教授に就任。
陸前高田市の被災状況を説明する
グループに分かれて、自身の復興支援や取組や経験を紹介する
質疑応答で参加者の質問に答える

第14回 青年社会活動コアリーダー育成プログラム

平成14年度に開始された青年社会活動コアリーダー育成プログラムでは、高齢者・障害者及び青少年の各関連分野における社会活動の担い手を海外に派遣し、その国でこれらの関連分野で重要な役割を担っている民間組織などのリーダーを日本に招へいするという相互交流を通じ、社会活動における青年コアリーダーの能力の向上とネットワークの形成を図っています。平成28年度より、地域課題対応人材育成事業「地域コアリーダープログラム」として実施します。

  • 派遣・招へいプログラム共通の総合テーマ(平成27年度)
  • 高齢者関連活動:生きがいのある高齢者の生活
  • 障害者関連活動:障害者の社会参加のための支援
  • 青少年関連活動:ユースワーカーの育成の在り方
事派
業遣
平成27年
10月11日(日)
~20日(火)
ドイツ(高齢者関連活動)9名、英国(障害者関連活動)8名、オーストリア(青少年関連活動)9名を派遣
(派遣者は、招へいプログラムの各種実行委員として受入れに協力)




平成28年
2月23日(火)
外国参加青年来日
オーストリア、ドイツ、英国から3分野38名の青年リーダーを招へい
2月24日(水) 開会式、基調講演、政府職員による講義、歓迎レセプション
2月25日(木)
~28日(日)
NPOマネジメントフォーラム2016
2月25日(課題別視察)
NPOマネジメントフォーラムのディスカッションテーマ(トピック1~3)に即した団体・施設を訪問し、活動現場の視察及び関係者との意見交換
2月26日~2月28日
日本の非営利団体・企業関係者(日本参加者)32名とトピック別ディスカッション及び成果発表会、日本参加者修了式
3月1日(火)
~6日(日)
地方プログラム
鹿児島県:高齢者関連活動、大分県:障害者関連活動、和歌山県:青少年関連活動
3月7日(月) コース別発表会、成果発表会、修了式、歓送会
3月8日(火) 外国参加青年帰国
元 公益認定等委員会事務局長 駒形健一氏による基調講演「日本における非営利セクターの現状について」
コース別発表会にて発表する高齢者関連活動の参加者
高木宏壽内閣府大臣政務官と外国参加青年(歓送会)

NPOマネジメントフォーラム2016

  • 【総合テーマ】
  • 非営利団体の活動の活性化のために
  • ~非営利団体と企業との連携・協働~

NPOマネジメントフォーラムは、高齢者・障害者・青少年の非営利分野で活躍する日本と諸外国の青年が一堂に会して、各国のNPO事情や活動事例に基づく有益な情報を共有し、実践的な意見交換を通じてNPO運営に関する能力の向上を図り、それぞれの分野において社会活動を支え、その中心的な担い手となる青年リーダーを育成することを目的として実施しています。

トピック1 事業における連携・協働

非営利団体における収益と企業の利益の概念の違いや利点を話し合い、両者が協働することには、数多くの利点があり、良い関係が構築されることで、社会全体にとってもより良い効果がもたらされることが確認できました。協働の経験を共有し、効果的な連携・協働のプロセスについて考え、高齢者・障害者・青少年の、どの分野の事業の企画においても活用できるフレームワークを提案しました。

トピック2 人材育成における連携・協働

非営利団体と企業において必要とされるスキルと、連携・協働することによる両者と社会にとっての利点をまとめ、人材育成における課題の解決策について話し合いました。その結果に基づき、ネットワークづくり、知識交流、人材交流、物的交流の四つの視点で自団体に活用できるアクションプランを作成しました。

トピック3 広報における連携・協働

非営利団体と企業の理想的な連携・協働とは、両者が広報のプロセスに関わることです。そのためには、初めに、互いが活用できる現存する連携や資源を評価することが大切になります。そこで、より良い広報に向けた取組の準備段階に活用できる組織内チェックリストを作成しました。

日本青年派遣

日本参加青年等26名は、平成27年10月11日(日)~ 20日(火)、高齢者分野はドイツ、障害者分野は英国、青少年分野はオーストリアにそれぞれ派遣されました。関連分野の行政機関、先進的・特徴的な社会活動現場や関連施設を訪れ、意見交換を行いました。またホームステイも体験しました。

高齢者分野(ドイツ)
団テーマ:
ドイツにおける高齢者の自己決定に基づく生活を支援する多様な連携と具体的手法を学び、日本の地域包括ケアシステムの構築促進に取り組む
日付 プログラム
10月11日(日) 東京(成田)発フランクフルト経由
ベルリン着
10月12日(月) ドイツ社会福祉連盟、社団法人リヒテンベルク区「認知症に優しいコミュニティーづくり」メモリークリニック、デイケアセンター「エル・フリーデ」、社団法人ベルリン・フォルクスソリダリタート訪問
10月13日(火) ドイツ連邦政府家族・高齢者・女性・青少年省(BMFSFJ)訪問、ドイツ高齢市民団体全国協議会代表(元BMFSFJ大臣)との昼食会、在ドイツ日本大使館訪問
10月14日(水) ゲルセンキルヒェン市長表敬、社団法人世代ネットワーク・ゲルセンキルヒェン、社団法人ZWAR訪問
10月15日(木) 多文化共生ハウス「ビクトル・ゴレンツ・ハウス」訪問、社会福祉法人フランクフルト理事長講義
10月16日(金) 社会福祉法人フランクフルトの地域活動センター、多文化共生ハウス「ユリー・ロジャーハウス」、新・高齢者住宅「ハインリッヒ・シュライヒ・ハウス」訪問
10月17日(土) フランクフルト市内ガイドツアー
ホームステイ
10月18日(日) ホームステイ
10月19日(月) 評価会、フランクフルト発
10月20日(火) 東京(羽田)着
ドイツ高齢市民団体全国協議会代表(元ドイツ連邦政府家族・高齢者・女性・青少年省大臣)との昼食会にて記念品を贈呈する
ドイツ社会福祉連盟(SoVD)にてドイツの社会福祉政策の説明を受ける
参加者レポート
要介護高齢者の自主的な地域活動参加を促すために
吉田 沙織
筆者一番左

私は作業療法士として介護老人保健施設で約7年、介護認定を受けた施設入所・通所リハビリテーション利用者を対象にリハビリテーションを提供している。個人テーマを「高齢者と地域をつなぐドイツでの取組を学び、要介護状態になった高齢者が、自主的に生きがいのある地域活動を企画・運営できるよう支援する」とし、ドイツでの高齢者に対する地域活動や外出支援についての取組や、自助・互助という考え方がどう育まれているのかを学ぶこととした。

「高齢者になっても自分で自分の人生を決める」これは、ドイツ連邦政府家族・高齢者・女性・青少年省でお話を伺った際に印象的だった言葉である。どの訪問先に行っても、活動の背景に「自己決定」という概念が当然のこととされていることに驚いた。

レンガの歩道など決して快適とはいえない環境にもかかわらず、車椅子や四輪歩行車を利用している人が、一人で、もしくは親や介助者と繁華街の街中やデパート、住宅街にいる姿が、日本よりも圧倒的に多かった。そのような光景が当たり前である環境を見ていれば、何らかの理由で車椅子を利用するようになった人も、屋外に出ようと思うハードルが低くなるのではないか。私の活動している市でも、外出したいと考えている車椅子・歩行補助具利用者は確実にいる。当施設が発行している新聞に、それらの利用者が欲しい情報を毎月、掲載していこうと思う。

派遣に当たり日本の医療・介護保険や国・地方自治体の現状を改めて学ぶことができたことも大変有益であった。国や地方自治体が目指すビジョン、各地で行われている先進的な取組などを知ることができ、ドイツ派遣中にも役立った。他国の良さだけでなく日本の良さにも気付くことができ、地域活動推進のため取り組んでいこうという前向きな気持ちがわいた。

団長、団員は「高齢者に関わる者」という共通点で集まったものの、その立場やアプローチの仕方が違うため、同じテーマに向かっていても違う視点や考え方に触れることができた。「仕事と年金生活の間」をコンセプトに活動している社団法人ZWARは、社会とのつながりが断たれる前に、住んでいる地域でつながることに加え、地域に関係なく好きなことでつながりを作る。介護予防という観点でも、日本がこれから取り組もうとしている自助・互助活動という観点でも非常に学ぶことの多い団体であった。今後、ZWARを招いて研修を開催するという目標を立てた。ドイツでの経験を社会活動に還元していくため、派遣で得たネットワークをいかし、切磋琢磨し合っていきたい。

高齢者介護住宅「夕陽の家」にあるデイケアセンター「エル・フリーデ」を視察する
エッケンハイムサービスセンターにてフィットネス器具を試用する
障害者分野(英国)
団テーマ:
英国における社会モデルを基盤とした地域連携の具体的な取組を学び、日本で多様性を認め合い、誰もが自分らしく暮らせる地域モデルを提言するとともに各地で実践する
日付 プログラム
10月11日(日) 東京(羽田)発、ロンドン着
10月12日(月) 在英国日本大使館、全国ボランティア団体協議会訪問、ロンドン市内視察
10月13日(火) 障害児協議会、障害問題庁(労働年金省)訪問
10月14日(水) 市民社会庁訪問(市民社会庁・教育省・保健省等より講義)
10月15日(木) スライブ、レオナルド・チェシャー・ディスアビリティー地域リソースセンター訪問
10月16日(金) ザ・フェッド、ステイ・アップ・レイト訪問
10月17日(土) ホームステイ
10月18日(日) ホームステイ、ヘッドウェイ・イースト・ロンドンのベン・グラハム氏との懇談
10月19日(月) インクルーシブ教育連盟、ヘッドウェイ・イースト・ロンドン訪問
評価会
ロンドン発
10月20日(火) 東京(羽田)着
園芸療法を用いて障害者の就労、自立支援に取り組む「スライブ」を視察する
知的障害当事者が始めた余暇支援団体「ステイ・アップ・レイト」にて団体の説明を受ける
参加者レポート
日本の高次脳機能障害者への地域生活支援の展開にむけて
青木 明子
ホストファミリーのケイトと

作業療法士である私は、6年前に病院を退職し、現在は高次脳機能障害者の地域生活を支援する特定非営利活動法人で働いている。パーソナライゼーションを基本とする英国を訪問するに当たり、個人テーマを「英国における見えない障害を持つ方へのアウトリーチや地域連携の方法を学び、日本の高次脳機能障害者への地域生活支援の展開に向けて作業療法士の立場から発信し実践に移す」と設定した。また、事前研修において「誰でも自分らしく暮らすためには、自己の意思決定が必要である」という考えを基に、意思決定支援が今回の英国訪問時の学びの基本であることを確認した。そして「インクルーシブ教育」「障害者に対する地域支援」「企業の取組・就労支援」の三つを英国での学びのキーワードとした。

英国では障害を理解する方法として社会モデルを利用している。2010年に施行された平等法に基づき、政府も積極的に人々の障害に対する意識改革に取り組み、国民自らが共生社会を作り上げることが重要とする様々な取組を学ぶことができた。地域においても障害理解を促進する取組をしており、ブライトンで訪問したチャリティ団体のザ・フェッドでは、ボランティアや企業向けの障害理解促進トレーニングを体験した。社会モデルを用いて障害について分かりやすく伝えることの重要性を改めて実感した。

英国では2005年に意思能力法が施行され、全ての人は判断する能力が備わっているという考え方に基づいて支援を行うべきとされる。意思決定の対象は住む場所や受けるリハビリテーションの内容、誰と付き合うのか、余暇を誰と過ごすのかなど、事実行為に関する決定も含まれる。「決定」ではなく、「行為」そのものやその「プロセス」に着目し、重要視している。今回の訪問先でも、現場レベルでは「プロセス」に重点をおき、本人が考えや意思を表出できるような支援をしていた。これは日本でも同様の取組を行っているが、土台となる考え方に「自分のことは自分で決める」という文化や価値の影響があり、日本においては独自の支援方法を模索する必要があると感じた。

高次脳機能障害は、脳損傷箇所により様々な症状が現れ、環境や時間、状態によって症状の現れ方も変動がある。本人の意思決定のプロセスでは、本人の状態に合わせた支援が必要であり、この際、支援に必要なキーワードは「気付き」である。失敗を含めた様々な経験が気付きにつながる。日本に限らず、失敗を未然に防いでしまう支援が英国でも多いというが、それは貴重な「気付き」の場面を奪っていると言い換えられる。訪問した施設では様々な気付きの場面をプログラムやスタッフの多様性により作り出していた。

高次脳機能障害者のみならず、見えない障害について社会の理解を得ることは長い道のりであり、実践すべきことは多いと考える。その解決に向けて、今後、高次脳機能障害者への訪問型支援の重要性を日本の作業療法士(OT)を始め社会に対して発信すること、障害者の余暇支援の幅を広げるプログラム立案を地域の事業所等と考える場をつくることに取り組んでいきたい。

脳損傷者への支援を行う「ヘッドウェイ・イースト・ロンドン」を視察する
青少年分野(オーストリア)
団テーマ:
団体の中核を担うユースワーカー育成のために、オーストリアの人材育成と青少年関係機関の連携、社会とユースワーカーとの連携の在り方を学び、自団体で実践し、社会に発信する
日付 プログラム
10月11日(日) 東京(成田)発、ウィーン着
10月12日(月) オーストリア連邦家族・青年省、青少年情報センター、スカウトグループウィーン51「ロバート・レブナー」訪問、ウィーン市内視察
10月13日(火) 余暇教育学研究所訪問、オーストリア連邦家族・青年省ソフィー・カルマシン大臣表敬、在オーストリア日本国大使館訪問(大使表敬)
10月14日(水) ヤング・カリタスによるプレゼンテーション、ギムナジウム、スペースラボ訪問
10月15日(木) ファミリー・デイ・センター、アクツェンテ・ザルツブルク訪問、ザルツブルグ市内視察、YOCOユースセンター訪問
10月16日(金) スペクトラム、ラジオ・ファブリック、リブ・イン・プロジェクト訪問
10月17日(土) ホームステイ(ウィーンとザルツブルクに分かれて)
10月18日(日) ホームステイ、振り返りと評価会
10月19日(月) ウィーン発
10月20日(火) 東京(成田)着
オーストリア連邦家族・青年省ソフィー・カルマシン大臣を表敬訪問する
在オーストリア日本国大使竹歳誠特命全権大使と赤木団長
参加者レポート
ユースセンターに求められる社会的機能と担い手の育成について
白田 好彦
筆者左

私は、青少年の社会性を養い、自立した大人への成長を応援することを目的とした、中高生の居場所に特化した施設の運営に関わっている。派遣の個人テーマを「青少年関連施設、特にユースセンターの社会的機能及び人材マネジメントを学び、自団体で実践するとともに、その成果を関係機関へ発信する」とした。

オーストリアの青少年に対する国の支援の根底にあるのは、「RESPECT&FUN」という考え方だ。若者が自主的にユースセンターに来たいと思えるようにすることが大切であり、そのためには若者にとって楽しいものを提供しなければならない。また、同じ目線で話すこと、「若者のために」ではなく「若者と一緒に」支援者が活動することを大切にし、青少年を尊重して対応する精神が、どの施設にも根付いていた。

ユースセンターは、市や町、教会が提供する若者の居場所である。多くの施設が無料で会費を払わず使用でき、卓球台や音楽スタジオ、ボードゲームをはじめとした余暇を過ごすためのツール、友人と過ごすスペースが存在する。支援者としてユースワーカーが存在し、子供たちの成長を支えている。ユースセンターは、若者が他者を通して自分を知り、社会と関わるための準備の場として機能していた。また、ユースワーカーは、青少年そのものを受け止め、寄り添い、次のステップへ向けた自発的な挑戦を促す。

ユースワークにおける人材育成の仕組みは、大きく二つある。一つは、ユースワークに関わる体系的な知識を研修等で学ぶこと、もう一つは、青少年団体やユースセンターなどで働く人材育成を担う職員が、後輩職員に対し「RESPECT & FUN」を実践することだ。職員の成長を情報のインプットに偏らせるのではなく、現場でのチャレンジ、アウトプットは、他者へ発信する過程で、現在値を整理することにつながる。この視点は特に大学生ボランティアのマネジメントに応用していきたい。

このような若者の居場所を創っていくために、自分自身が広告塔として、居場所の価値、ユースワークの価値を今後発信していきたい。また、ネットワーク構築に向けて行政が大切にしていることも踏まえながら、非営利セクター側がタイミングを見計らって行政側にアドボカシーしていくという視点を持ちたい。内からだけではなく、外からのアプローチとして、積極的にメディアを活用するなどのアクションも検討したい。日本の良さをいかすような視点も取り入れた、青少年の拠点を作りたいと決意を新たにした。

スカウトグループウィーン51「ロバート・レブナー」活動紹介
ヤング・カリタスにて説明を受ける

外国青年招へい

オーストリア、ドイツ及び英国から3分野(高齢者、障害者、青少年)に携わる青年38名は、3月1日(火)~ 6日(日)、地方プログラムとして、高齢者分野は鹿児島県、障害者分野は大分県、青少年分野は和歌山県をそれぞれ訪れました。

高齢者分野 (鹿児島県)
テーマ:
認知症高齢者を地域で支える ~団体と行政の連携と住民主体活動の促進~
日付 プログラム
3月1日(火) 鹿児島県庁表敬訪問、鹿児島県における高齢者施策について講義、歓迎会
3月2日(水) 公益財団法人慈愛会介護老人保健施設「愛と結の街」訪問、職員との意見交換
3月3日(木) 公益社団法人認知症の人と家族の会鹿児島県支部やすら木会、鹿児島市長寿あんしん相談センター(地域包括支援センター)、鹿児島市認知症等見守りメイト概要説明
3月4日(金) 地方セミナー
3月5日(土) 評価会、ホームステイ
3月6日(日) ホームステイから戻り
地方セミナーで分科会のまとめを発表
公益財団法人慈愛会リハビリテーション室 理学療法士
受入実行委員長 土井 敦

私は5年前に本事業でドイツに派遣され、高齢者福祉について学ぶ機会を頂いた。本事業に感銘を受け、招へいプログラムを鹿児島県で受け入れることを夢見ており、今回それが実現した。

訪問先での学び

何よりも印象深かったのは、介護老人保健施設「愛と結の街」で、外国参加青年が今回のテーマである「認知症高齢者」と実際に交流する場面であった。

認知症を患っている高齢者にとって、急激な環境変化は大きなストレスになり、認知症症状に悪影響を与えることは周知の事実である。青年たちと交流することは認知症高齢者にとって日常とかけ離れた環境に身を置くことを意味するため、混乱してしまうのではないかと心配な面もあった。しかし、実際に交流してみると、青年たちの配慮ある対応もあり、普段は表情の硬い高齢者を含め、全ての高齢者が満面の笑顔で、「はろー!!はろー!!」と言いながら、各国の国旗を振り、最大限の歓迎をした。これは、スタッフにとっても本当に嬉しいことであり、無意識のうちに「認知症高齢者」をラベリングしてしまっている自分自身を反省した。驚いたことに、交流後も混乱する高齢者はおられず、普段は短期記憶障害があり、数分前の出来事を思い出すことが困難な高齢者が、翌日も「昨日は楽しかった」と言っていたとの報告を受けた。このことから高齢者が社会と関わる時間をつくることが何より大切な支援であることを再確認した。

地方セミナーでの学び

地方セミナーは、今回の準備の中で一番の難関であったが、県内で活躍する方々の惜しみない協力のおかげで、すばらしい学びの場となった。何より、午前の全体会では予想を大きく超えた100名以上の参加者とこの経験を共有できたことは嬉しい誤算であった。

反省としては、分科会で、ディスカッションよりも情報交換になる時間が多くなったことだ。もちろん、情報交換も重要な学びではあるが、限られた時間をより有効に活用するために、ケースに沿った議論を意識することや発信されたシステム等の情報に対して、それが構築された背景、課題や考え方などを掘り下げることで、より深い議論が可能となったのではないかと考える。引き受けて下さったモデレーターの方々のすばらしいリードのおかげで、最終的に焦点を絞った議論となりスムーズな進行、発表となったが、今後の反省として、実行委員会の中で共有していきたい。

青少年分野 (和歌山県)
テーマ:
地域活性化のための青少年活動の活性化と青年リーダー育成について
日付 プログラム
3月1日(火) 和歌山城見学、和歌山県庁表敬、和歌山県における青少年施策について講義、歓迎会
3月2日(水) 特定非営利活動法人ハートツリー・南紀若者サポートステーション訪問、職員との意見交換、実行委員会との交流会
3月3日(木) 総合型スポーツクラブくちくまのクラブ、和歌山県立熊野高等学校訪問、上富田町長表敬
3月4日(金) 地方セミナー
3月5日(土) 評価会、ホームステイ
3月6日(日) ホームステイから戻り
オーストリア団団長
アンドレアス・シュナイダー

三つのすばらしい施設を訪問し、日本の青少年分野が抱える課題を巡る青少年団体の活動の現状がよく理解できた。いずれも、全国レベルでもっと注目されるべき成功事例であろう。日本とオーストリアが同じ社会問題に直面し、日本が私たちと異なるアプローチや解決策をとっていることを知り、興味深かった。

地方セミナーでは、ボランティア青年、青少年団体のリーダー、地元の先生方と活動に関する情報交換ができた。日本とヨーロッパの青少年の課題と活動は同様であっても、余暇とユースワークを取り巻く状況は異なることがワークショップを通じて明らかになった。日本の青少年が過ごす余暇時間はかなり少ない。若者の人口が減っているため、日本の青少年協議会と青少年クラブはますます多くの点で学校と競い合っている。最後に、日本の青少年分野に対して、以下の点が特筆された。

  • 青少年施策は分野(学校、ボランティア、健康問題)を超えた取組である。
  • ノンフォーマル学習と課外活動の認定ツールが導入できる可能性がある。
  • 学校とユースワークは分離すべき。教師は青少年活動を担当せず、教育に専念する。
  • 青年の社会参加を促し、自尊心を高めることで、青少年の主体性を促進する。
  • プロジェクト開始時から活動評価を考慮する。(インプット―アウトプット―アウトカム―インパクト)
  • 日本の青少年制度には制約が多い。
  • 共同体意識と共同体の価値観には良い面も悪い面もある。
  • 青少年への総合的アプローチが有効である。

また、私にとってもう一つのハイライトはホームステイだった。美しい日本の伝統的な家で、日本家庭の日常生活について多くのことを教えてくださったホストファミリー、とりわけ日本人の温かいおもてなしに対し、心から感謝したい。私の世話をしてくれただけでなく、隣人一家を夕食に招いて日本について学び、伝統的な日本の衣服でカラオケに行く機会を頂いた。特に白浜地区では多くの人に会い、伝統的な温泉に行ったことがとても楽しかった。概して和歌山県訪問は、日本とヨーロッパの参加者双方にとって充実したものとなった。和歌山県の成功事例から、オーストリア政府が学ぶべき多くのことがあるという思いを胸に、私は和歌山を後にした。

学びをどのように実践していくか

政治や専門に関する知識を増やし、様々な経験をするとともに、自分と同じ分野に従事している人々とのネットワークを広げることができた。特に引きこもりの問題は新鮮で興味深かった。この現象はヨーロッパ社会ではあまり見られないが、将来的には課題になるかもしれない。ゆえにこの課題に対する日本の取組はオーストリアやヨーロッパの青少年政策にとって有益な情報になる。オーストリアでは引きこもりは見られないが、社会的に困難な状況にある青年がいる。引きこもりは大抵、不登校から始まる。早期介入が非常に重要である。さもなくば問題が大きくなり、対処が困難になる。いわゆる「早期の支援」が極めて重要であると話し合った。

専門や政治に関する洞察に加え、日本を始めとする各国の人々とすばらしい友情を育むことができた。彼らとは是非仕事でも個人的にも末永く良い関係を続けたい。どうもありがとうございました。

和歌山県立熊野高等学校の生徒と意見交換する
NPOハートツリー・南紀若者サポートステーションを訪問し、説明を受ける
障害者分野(大分県)
テーマ:
障害者理解を促進できる支援者養成の在り方~地域社会との連携・専門性向上・次世代育成からの視点から~
日付 プログラム
3月1日(火) 大分県庁表敬訪問、大分県における障害者施策について講義、歓迎会
3月2日(水) 社会福祉法人萌葱の郷大分県発達障害者支援センターECOAL(イコール)、社会福祉法人みずほ厚生センター
障害者支援施設聖心園訪問
3月3日(木) 大分県ボランティア・市民活動センター(大分県社会福祉協議会)、大分大学 教育福祉科学部社会福祉コース訪問
3月4日(金) 地方セミナー
3月5日(土) 評価会、ホームステイ
3月6日(日) ホームステイから戻り
社会福祉法人萌葱の郷のレストラン「どんこの里いぬかい」で働くスタッフとともに
社会福祉法人 萌葱の郷
受入実行委員 田島 良平

今回受入施設の担当者として、貴重な体験ができた。訪問時の意見交換で、各国のスタッフの専門性を高める仕組みと障害への理解を促進する取組について情報共有した。オーストリアでは、常勤の場合、勤務時間内に年間40 ~ 80時間を研修に充てられる仕組みがあり、支援者自身が知識を深め、専門性を高めることができる。また、サバティカル休暇を取り入れ、自由な視点から福祉を見つめ直し、新しいビジョンを持って職場復帰できる。目の前の形にはまった福祉にだけに力を尽くすのではなく、幅のある創造的な福祉へと転換できる取組が行われていた。それは、随時生まれるニーズに寄り添うことができる力を持っていると感じた。また、各国とも、スーパーバイザー(SV)への評価機能やSVへのスーパーバイズ、研修終了後も定期的に外部講師を招きSVの質の維持・向上が行われていた。地域ニーズを把握し、地域格差を無くすための取組がなされていた。

私たちも、取り組んできたスーパーバイザー養成研修終了後のSVへのフォローアップの必要性は認識しており、SVの会を立ち上げ、生涯研修の場としてきた。様々な分野から受講されるので個々の専門分野や能力だけを活かすのではなく、今回外国参加青年たちから得られた意見を参考に、フォローアップ体制構築の、一層の充実を目指し取り組んでいきたい。

昼食は、当法人のレストランどんこで食べてもらった。障害のある人とない人が一緒に働き、障害特性とニーズに応じて働けるよう配慮したレストランどんこで、外国参加青年は、料理の味もさることながら、キッチンやフロアで障害のある人が自信を持って働いている姿に感銘を受けていた。また、障害を持ったスタッフと写真を撮り、会話を楽しむ姿が印象的であった。さらに、このレストランに併設する物販所では、レストラン以外の就労部門で作られたネームストラップ、ポーチなどの織物や、アート作品のポストカード、窯で焼かれた陶器、農作物などを扱う。外国参加青年は、実際に商品を手に取り、その多様性や質の高さ、値段の安さに驚きの声を上げていた。発達障害を持った方は、人前に出てコミュニケーションを取るのが難しく、自分の作ったものの評価を受ける機会が少ない。そんな中、外国参加青年から、まっすぐな言葉で商品の評価をもらい、日々の頑張りを認めてもらったことは、働いている利用者にとって、日頃の疲れを吹き飛ばす、最高の成功体験になった。後日、ホームステイ先の方に、レストランどんこで購入したポーチがなによりも宝物だと外国参加青年が言っていたと伝え聞いた時、これまでの取組に自信を持つとともに、障害を持ちながらも丁寧に作成している製作者に伝え、今後の力にしたい気持ちでいっぱいになった。

受入プログラムを通じて、多くの学びとすばらしい出会いがあり、各国の様々な取組について情報交換をすることで、多くの考え方を知り、各国で障害者に関わる方々の情熱を得る機会を設けていただき本当に感謝している。答えのない人と人との関わりは国や文化を超えても、根本にある想いは変わらないのだ。今後は、既存の福祉概念にとらわれず、自由な発想を持って障害者の支援をすることの可能性を学んだからこそ、情熱を持って一人一人に寄り添った自由な福祉を目指したい。

平成28年度 青少年国際交流を考える集い(ブロック大会)予定
ブロック 開催県 開催日(案) ブロック構成都道府県 会場
北海道

東北
秋田県 12月3日(土)~
4日(日)
北海道・青森県・岩手県・
宮城県・秋田県・山形県・
福島県
田沢湖芸術村 温泉 ゆぽぽ
(仙北市田沢湖卒田早稲田430)
関東 埼玉県 11月12日(土)~
13日(日)
茨城県・栃木県・群馬県・
埼玉県・千葉県・東京都・
神奈川県・山梨県
【1日目】川越東武ホテル
(川越市脇田町29-1)
川越市南公民館
(川越市新宿町1-17-17)
【2日目】ウェスタ川越
(川越市新宿町1-17-17)
【宿泊】川越東武ホテル
(埼玉県川越市脇田町29-1)
北信越
(全国大会)
新潟県 8月27日(土)~
28日(日)
新潟県・富山県・石川県・
福井県・長野県
岩室温泉ゆもとや
(新潟市西蒲区岩室温泉91-1)
東海 静岡県 7月2日(土)~
3日(日)
岐阜県・静岡県・愛知県・
三重県
マイホテル竜宮
(静岡市葵区伝馬町10-5)
近畿 兵庫県 平成29年
1月28日(土)~
29日(日)
滋賀県・京都府・大阪府・
兵庫県・奈良県・和歌山県
青少年宿泊研修センターOAAはりまハイツ
(加古川市加古川町大野1754-2)
中国 島根県 7月23日(土)~
24日(日)
鳥取県・島根県・岡山県・
広島県・山口県
ゆきみーる
(島根県大田市大田町大田イ370)
【宿泊】:スカイホテル大田&NEWスカイホテル
(大田市大田町大田イ318)
四国 徳島県 7月16日(土)~
17日(日)
徳島県・香川県・愛媛県・
高知県
【1日目】とくぎんトモニプラザ
(徳島県青少年センター)
(徳島市徳島町城内2番地1)
【2日目】ザ・グランドパレス
(徳島市寺島本町西1-60-1)
【宿泊】アグネスホテル徳島
(徳島市寺島本町西1-28)
九州 福岡県 11月26日(土)~
27日(日)
福岡県・佐賀県・長崎県・
熊本県・大分県・宮崎県・
鹿児島県・沖縄県
太宰府館
(太宰府市宰府3-2-3)
【宿泊】ルートイングランディア大宰府
(太宰府市連歌屋3-8-1 )
平成28年度 内閣府青年国際交流事業受入府県市予定
事業名 受入府県市 実施時期 招へい国
国際青年育成交流事業
(第23回)
和歌山県 10月1日(土)~
5日(水)
ドミニカ共和国、オーストリア
島根県 リトアニア、パプアニューギニア
函館市 ラオス、バーレーン
富山県 10月5日(水)~
9日(日)
ドミニカ共和国、オーストリア
香川県 リトアニア、パプアニューギニア
大阪府 ラオス、バーレーン
日本・中国青年親善交流事業
(第38回)
岩手県 11月9日(水)~
11日(金)
中国
岐阜県 11月11日(金)~
14日(月)
日本・韓国青年親善交流事業
(第30回)
愛知県 7月26日(火)~
29日(金)
韓国
滋賀県 7月29日(金)~
8月1日(月)
「東南アジア青年の船」事業
(第43回)
宮城県、福島県、栃木県、
長野県、三重県、兵庫県、
奈良県、岡山県、徳島県、
高知県、長崎県
10月27日(木)~
30日(日)
ASEAN10か国
次世代グローバルリーダー事業
「シップ・フォー・ワールド・ユース・リーダーズ」
山形県、福井県、京都府、
広島県、山口県
平成29年
1月19日(木)~
22日(日)
ブラジル、カナダ、コスタリカ、
エジプト、フィジー、インド、
ケニア、ニュージーランド、トンガ、
ウクライナ
地域課題対応人材育成事業
「地域コアリーダープログラム」
鳥取県、大分県、鹿児島県 平成29年
2月21日(火)~
26日(日)
フィンランド、ドイツ、英国

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